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2002年10月
第001回 「子どもシネマスクール」(後編)
☆「演じる役は、等身大の自分の姿」
8月8日(木)〜12日(月)映画撮影本番!(西東京市内)
8月8日(木)午前7時30分、西武新宿線西武柳沢駅前に受講生の子どもたちと後藤監督、スタッフが集合。
朝早い時間ながら、遠方からの子(埼玉県所沢市や日野市など)も含め子どもたちの遅刻は無い。
今までの屋内の授業を通して子どもたちのやる気が高まってきているのかもしれない。
スタッフの自家用車に分譲して、今日のロケ地である農家へと向かう。
今回、製作する短篇映画のタイトルは「ぼくらの夏休み」。小学校5年生の仲良し5人組が、夏休みの自由研究のために農業をしている翔太のおじいさんの納屋をさがす所からはじまる。
そこで、昔の地図を発見した5人組は、それを宝捜しの地図だと確信して探検に乗り出すというストーリー。
現代っ子である5人組にとっては、普段、目にしない農業の様子もまた探検の対象ともなった。
「ニガウリは、中は乾いていて、空洞になってるッ!」これは映画の中で子どもが語る台詞の一説だが、
この言葉は、演じる子どもの本音でもあった。
子どもたちは、撮影の合間合間に興味深く農作物や農機具を眺めたり、時にはいじって遊んでいたりしていた。
「どこを見てるの、そっちじゃないだろ!」いよいよ撮影の開始。本番が始まると、
現場はそれまでの和やかな雰囲気から一転して緊張がみなぎってくる。
時には、後藤監督の厳しい言葉が響き渡る。演技上、一番多く受けた注意は、目線のこと。
どうしても目線が監督や、カメラの方に向いてしまうのだ。また、複数の人物が登場する場面では、
カメラのフレームに入らない人物は実際には立ち会わないこともある。
そんな時は、助監督らが、こぶしを掲げて相手役の位置を、演じる役者に教えるのだが、
それがなかなか子どもたちには納得できないようだった。
なぜ、人もいないのに、そこを見つめないといけなのか、と。
また、次に注意が多かったのは、セリフへの感情の入れ方。授業で学んだ“役になること”の実践だ。
「その時、駿(役名)はどう思ったか、それをよく考えて!」炎天下の中で、演技のテストが繰り返される。
子どもたちの体調を考えて、カメラのフレームに入らない子は、日陰で休ませる。
休憩になったと思ったら、またテストだ。そんな条件の中で子どもたちは、キレることもなく監督の注文に応えて演技を続けた。子どもたちは、少しづつ「役を演じる気持ちの大切さ」を体得していたのもしれない。
「そこ静かにして、本番始まるよ!」
役者さんにとって、映画の現場は、実際に演じる時間よりも待ち時間の方がはるかに多い。
元気一杯の子どもたちは待ち時間も無駄にしない。子どもたちは、もう友だち同士になって遊んでいる。
蝉の穴に水を浸したり・・・と、農家の自然は子どもたちの格好の遊び場となった。
しかし、映画の撮影は基本的には同時録音(撮影と一緒に音も録る)であり、本番中の雑音は禁物である。
はしゃぐ子どもたちは、スタッフから厳しく注意を受ける。
「みんなのおしゃべりが、今、演じている人とスタッフに迷惑をかけるんだよ」
スタッフのこの説明に、子どもたちは映画は集団でつくる芸術であるということを感じ取ってくれたであろうか?
 撮影は5日に渡って行なわれた。本来は、現場で演出や撮影・照明なども教えることになっていたが、
連日30度を超える暑さにそれ所ではなく、子どもたちは結局役者に徹することに。
8月12日けが人も病人も無く、無事に全撮影を終えることができた。
☆「はじめてのアフレコに挑戦」
8月19日(月)アフレコと編集の体験
台風の影響で朝から激しい雨が降っている。そんな中スタッフの心配をよそに、9時には子どもたち全員が揃った。
12日に撮影が終わって以来なので、皆待ちに待っていた様子。
43インチのテレビ画面にアラ編集した映像を写して、子どもたちにはじめてのアフレコを体験する。
当初、撮影時、セリフがうまく入らなかった部分をアフレコする予定だったが(使う使わないは別として)結局全てに挑戦させてみようと言うことになった。
後藤監督は真剣に画面を見つめる子どもたちに、撮影の時と同じように演技指導をする。
これっぽっちも手を緩めない。それにしても子どもたちのカンの良いのには驚く。
最終段階の今、折角のってきてこれからと言う時に終わるのが惜しいくらいだ。
昼、各自お弁当をひろげて、和気あいあいと食べている。初日と比べると格段の差だ。
午後「編集をしたい(パソコンで)人、手をあげて」という監督の声に全員が「はーい」と手をあげるや、
ノートパソコンに殺到した。
パソコンから大画面テレビに繋いでのアフレコに集中していたものの、傍らのパソコン操作が気になって仕方がなかった子どもたち。
担当者指導のもとオーバーラップやワイプで全員拍手喝采している。
後藤監督は昼食時、「子どもたちは、編集にはあまり興味ないだろう」と言われていたので、皆の興奮ぶりに唖然としている。
一時静かになった台風、この間に子どもたちを安全に帰したいということで、2時30分終了とした。
☆「来年もやりたいね」
8月23日(金)13:30完成披露試写会
真っ黒に日焼けした子どもたちと後藤監督、スタッフの全員が、久しぶりに西東京市民会館に集った。
今日は、待望の完成披露試写会。平日にも関わらず、わが子の晴れ姿をみようと、父母達も見守っている。場内が暗くなって物語が始まった。
スクリーンに映っているのは子どもたちの素晴らしい顔々であった。
「みんな、よくやってくれた」試写終了後、後藤監督は子どもたち一人一人に語りかけるように、話し始めた。
「炎天下の中、何度もテストをさせてごめんね。演技がダメだから何度もやらせたのではなく、みんなの良いところを引き出そうと思って、繰り返し演技させたんだ。
本当にみんな、良くやった」
現場では厳しい後藤監督も、この時は優しい教育者になっていた。監督のお話の後、子どもたちが次々と感想を述べた。
「台詞が思ったより難しかった・・・」
「映画の時間が短く感じられた」
「いい思い出になった」
子どもたちの率直な感想を、後藤監督は優しい眼差しで聞いていた。
「時間が短く感じられたってことは、良い作品だからだよ。失敗作だと時間が長く感じるんだよ」
これは後藤監督の言葉。
「最後に一言いいですか?」
終了間際に、父母席から一人の初老の男性が発言した。
「私は受講生の祖父ですが、孫は毎日楽しそうに撮影に出かけました。
そして、こんな素晴らしい作品をつくってもらって本当にありがとうございました」
父母たちの席からは後藤監督への拍手が沸き起こった。
☆さいごに
「本当に素晴らしい作品です」
「来年も是非やってほしい」
「来年は、この子の弟を!」
試写会終了後、子どもたちが後藤監督にサインを求める傍らで、父母たちは、感動を述べあっていました。
プロデューサーを務めた日本映画映像文化振興センターの竹下資子副理事長によると、後藤監督からも、来年はこうすると良いのでは・・・等色々アイディアも出ているので、もっと早くから準備をして、今度は大人も子供も一緒に映画づくりをしたい、とのこと。
今回の取材を通して、映画というのは、子どもたちに多くのことを教えてくれることを実感しました。
特に、映画をつくるという集団活動は、寺脇研さんの言葉にもあるように「気持」が大切になってきます。
見る人のことを考える気持、そして、他の出演者やスタッフのことを考える気持、これらの気持を持つことは、実際の集団生活で生きていくためにも大切なことです。
今回の企画は、子どもたちのシネマスクールであるばかりでなく、共に汗を流した大人たちにとって、生涯学習の実践でもあったようだ。
学校週休2日制の実施、総合的学習の開始など、本年4月より新しい学習指導要綱に基づく授業が始まりました。
このような中、映画を地域を巻き込んだ教材として、今後、各方面の方々に是非とも検討していただきたい、と思います。
☆監督・プロデューサーのコメント
◎後藤俊夫監督
結局現場では炎天下にも関わらず、子どもたちには見事な演技力を発揮した。
初めての演技体験だ。撮影途中では大変な苦労があった。
それをのり越えての完成。喜びも大きいと思う。
また、子どもたちは大人が必死で仕事に取り組む姿を見ている。
きっと何か心に残っていると思う。映画づくりの夏休みが、楽しい思い出としていつまでも心に残ってほしいと願っている。

◎竹下資子プロデューサー
2001年西東京市で行った映画製作ワークショップの参加者達が、ボランティアで先行して動いてくれていたので、地域の人達の協力も得られた。
映画を伝え、拡げていく為の新しい方向性を今つかみつつあります。
(まとめ:木村昌資・桑島まさき・竹下資子)
第001回 「子どもシネマスクール」(前編)





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