インターネット エクスプローラーダウンロード
推奨環境:IE5.5以上



 HOME > 思い出の映画この一本 > 連載記事


第018回 「夜の河」吉村公三郎
 昭和31年、私が中学校三年生の時の思い出の映画である。
父からもらったパス券で松江の映画館で一人で観た。大変感動し、その後強烈な印象に残ったのが、山本富士子の「女の気丈さ」と「美しさ」であった。舞台が京都であり、日本古来の神社・古寺が古風な情緒をかもし出す映像のすばらしさは私の大学進学にまで影響を与えた。
その後念願の京都での大学生活4年間、太秦で東映・大映の多くの映画にエキストラで出演することになったのである。
 不思議に思っていたのがラストシーンのメーデーの行列の場面である。違和感のあるこのシーンは何故かなと思っていたのだがその後、吉村公三郎監督の多くの映画を観るようになり納得できた。やはり戦後、新藤兼人脚本による映画をコンビで多く作り、近代映画協会を設立した社会派監督としてはどうしても古いものの中に革新的なものを入れたかったのであろう。
この映画は澤野久雄の原作であるがこれ以来、泉鏡花の「白鷺」「歌行燈」、井上靖の「氷壁」「猟銃」「憂愁平野」、志賀直哉の「暗夜行路」、谷崎潤一郎の「細雪」、永井荷風の「東綺譚」等、文学作品と山本富士子の映画に夢中になって行った。
 日本映画史の中で恋愛映画の名作の一つに「暖流」があるが、その吉村監督のはじめてのカラーによる恋愛映画がこの「夜の河」である。山本富士子がこの映画に出演することにより、演技派女優として開眼し名実共にトップスターとなった記憶される作品でもあり、彼女の代表作でもある。この時24歳であった。
 昭和38年、五社協定により大映をやめフリーとなったが映画界から締め出され、誠に惜しい女優を映画界は失った、残念である。
(映文振センター理事 渡部純雄)





組織概要   入会案内   個人情報保護指針   よくある質問   お問い合わせ

Copyright (C) 1981 - CurrentYear MCAC All rights reserved.
 
Powered by L-planning