戦後、当時住んでいた世田谷区北沢の近くに笹塚館という洋画専門館があり(何故か入場料金が3円99銭だった)始めて見た外国映画はミュージカル「アニ?よ銃をとれ」(ベティ・ハットン主演)だった。小学生だったので、ボップ・ホープやアボット・コステロの喜劇、ジョン・ウェインやアラン・ラッドの西部劇をよく見た。中学高校時代をすぎて20才前後になると、男っぽい西部劇とは別にミュージカル映画に魅せられた。「赤い靴」「リリー」「ブリガドーン」「雨に唄えば」など数限りない作品に夢中になった。日本映画では絶対実現不可能なジャンルだ。20才を過ぎる頃は私も青春スターといわれる俳優になっており「エデンの東」や「理由なき反抗」のジェームス・ディーンのキャラクターや演技に憧れ、傾倒していた。
しかし今回の思い出の映画この一本には、フランス映画「太陽がいっぱい」を挙げたい。アラン・ドロンが友人の恋人を自分のものにしたい欲望から色々な細工を企て、恋人の男を殺し、恋人もお金も手に入れ、すべてがうまくいった!と思うがそうではなかった。
アラン・ドロンの影のある不良っぽいキャラクター
、友人の御曹子ラフ・バローは野性的でドロンとは対照的な男性、恋人役のマリ?・ラフォーレの端正で、劇中ギターを爪弾く静かな風情は私の好みで、主演者三人は絶妙なキャスティングだ。友人をヨットで殺すシーンが、突然の風雨で荒れる海となる画面の迫力、あの甘く切ないテーマ曲が流れる中、"すべてが思い通りになった、太陽がいっぱいだ・・・"と呟くドロンからカメラがパンすると、刑事が主人公を捕えることを暗示するドンデン返しのラストシーン。まさにロマンティックサスペンス映画の魅力のすべてが満ち溢れたこの一本だ。
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