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第011回 「目黒シネマ」支配人 宮久保伸夫さん
すべてのはじまりは、偶然の出会いから
 古典落語「目黒のさんま」で有名な目黒では、毎年秋に「さんま祭」が催されるそうです。「祭の時には地下の劇場から、駅前の通りに上がってみると、さんまを焼く香ばしい香りがして・・」 そう語ってくれたのは目黒シネマ支配人の宮久保伸夫さん。今回は、古き良き江戸時代の薫りと、新しい街が仲良く肩をならべているこの目黒で、秀作映画を二本立てで上映しつづけている宮久保支配人にお話をうかがいました。

「きっかけは、テレビの映画ロードショーだった」
 宮久保さんを映画の世界へと引き込んだ作品、それは黒澤明監督作品「生きる」でした。しかし、それは全く偶然の出会いであったそうです。しかも、場所は映画館ではなく、家のお茶の間。たまたま、夕食を食べながらテレビを見ていたら「生きる」が放映されていました。「最初は、何だか暗くて嫌だなぁ」と思っていたら、次第にその映画の世界に引き込まれていくことに。その当時宮久保さんは、自分の将来の生き方を思い悩んでいた20歳の青年でした。やがて、黒澤作品を見るために文芸座や並木座といった名画座へ通い続けることになります。
「劇場支配人に憧れて」
 映画という世界に、自分の生きる道の糸口を見出した宮久保さんは、地元新宿の映画館でアルバイトとして働き始めます。「押し寄せるアイドルのファンを整理するために徹夜で勤務したり、お客様にからまれたり・・」と大変なことが多かったそうです。しかし、劇場アルバイト時代にお世話になった支配人に強い感銘を受けます。「ともかく、格好良い。トレンチコート姿が本当にきまっていて。それでいてクールで、まじめで」 多感な20代を映画館で過ごした宮久保さんは、その支配人の後姿に、自分の将来の姿をたぶらせていたのかもしれません。
「理想の劇場を目指して」
 今から7年前。30代を目前にした宮久保さんに転機が訪れます。現在の職場である目黒シネマが、定年退職を間近に控えた支配人の後任者を募集したのです。人づてにその話を聞いた宮久保さんは早速応募して、そして見事合格。「会社の上層部は、すぐに辞めるだろうと思っていた」とのこと。しかし宮久保さんは、その劇場をキャンパスに自らの夢を思い描こうと志します。「自分が映画から生きる喜びを受けたように、お客様にもこの喜びを味わってもらいたい」。
 とは言え実際のところ、理想と現実の間には大きな隔たりがありました。先ず第一に劇場の雰囲気が暗かった。
「これでは、女性客が気楽に入ってくることができない」、そう思った宮久保さんは自らペンキと刷毛を買ってきて、スタッフのみんなと壁を塗りかえ、そして床も張りかえました。その後も宮久保さんは、スタッフ一人一人の持ち味を引き出し、劇場の雰囲気を地道に改善していきます。
「この手書きの看板もスタッフの力作なんですよ」。実際、劇場を訪れてみると入口に置かれた可愛らしい看板をはじめとして、椅子用の座布団、手書きの関連商品説明、関連作品のポスター掲示等々、場内の至るところからスタッフの映画への思いとお客様への心遣いを感じとることができます。

 昨年から目黒シネマでは、ロビーで映画図書の貸し出しサービスをはじめました。「スタッフが本屋で見つけた珍本もあれば、僕が古本屋で掘り出した古書もある。配給会社から頂いた貴重な書籍もあれば、お客様から寄贈された絶版本もある。少々ルールはありますが、現在100名程のお客様にご利用いただいてます。監督のサインが入った本なんか憧れですね」目を輝かせて話す宮久保さんは、支配人の顔というより映画ファンの顔になっていました。そんな若き宮久保支配人の今後から目が離せません。
(文:木村昌資・写真:竹下資子)
【目黒シネマ:http://www.okura-movie.co.jp/meguro_cinema/





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