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2009年02月14日
第100回 「紀ノ川」
女優:司 葉子さん
 昭和56年(1981)から続いている、邦画の名作を監督や出演者らと一緒に鑑賞する「監名会」。その記念すべき第100回が2月14日、京橋のフィルムセンターで開催された。上映作品は、故・有吉佐和子原作小説を映画化した「紀ノ川」。昭和41年度の作品で、監督は中村登(故人)、配給は松竹。
 明治32年、紀州の旧家真谷家に嫁ぎ夫と子供と家を頑なに守り続け明治、大正、昭和を生き抜いた女の一生を、母、娘、孫娘という女系家族にスポットをあて描かれた名作だ。人生を川の流れになぞらえて紀ノ川を下り“花”(司葉子)が嫁いでゆく豪華なシーンから始まる3時間近い大作は、観客を圧倒する。
 上映会の後、本作で22歳から72歳までのヒロイン“花”の役を演じ数々の映画賞を受賞した女優の司葉子さんに、映画評論家で当法人副理事長の寺脇研さんがお話を聞いた。司会進行は俳優の田中菜津子さん。
 司葉子さんは開口一番「すごい顔ぶれの方々に囲まれて…、あんなベテランの中で演らせて頂いたんだなって、驚きました」
寺脇さんの「中村登監督は、作品からは紳士的な方のようで…」という質問に「中村登監督は感激屋さんで、ワンカット終わるごとに『すばらしい!』と台本を投げられた」とのこと。
中村監督も成島東一郎カメラマンも今はなく、当時カメラマン助手を務めた兼松熈太郎さん(日本映画撮影監督協会理事長)が会場に見えていて、急遽トークショーに参加、「中村監督はおっちょこちょいで川に落ちたり、釘を踏んだり、色々ありました」と43年前の思い出を楽しそうに語った。
また、東宝専属の司さんが松竹の作品に出演して感動したことの一つに、サービスカットを撮ってもらったことをあげた。これは女優さんの最高に美しいカットを撮影しておいて、いいところへパッと入れるのだと兼松さんは説明された。
 「このお話をいただいたのは映画界に入って一つの区切りだと思っていた頃で、英国へ留学しようとホテルの手配を済ませていました。迷いましたが、少し前に亡くなった母の人生を重ねて演じてみたいと思い、受けました」。
 ちなみに最初に司さんがオファーされたのは孫娘役の華子、次に娘役の文緒、最後に“花”の役が廻ってきたそうだ。人生の分かれ目の選択、3番目の役柄で好演、女優を生涯の仕事とすることを決心されたのだから、人の一生はわからない。私生活では相沢英之氏と結婚し女優業を一時離れ、ご存じの通り相沢氏が衆議院議員選挙に出馬するために完全に女優業から離れたこともある。「紀ノ川」で、村長から国政へ参画した夫を支えた“花”同様の生き方ではないか。
 大作「紀ノ川」を見て、司さんのお話をうかがい、年をとるのはすばらしいこと!そう思えるのは“花”の悠揚な一生をみたからか、否、74歳とは思えないおっとりと美しく、それでいて親しみやすい司葉子さんに魅せられたからだろうか。
(文:桑島まさき/写真:島崎博)





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